身を切るような寒さが続く真冬。道路の植え込みや公園の片隅に置かれることの多いのが外猫用の巣箱だ。段ボールや発泡スチロール製の箱に猫の出入り口となる穴をあけ、中には毛布。場合によっては温水の入ったペットボトル、使い捨てカイロが入れられていることもある。猫ハウスとも呼ばれている。

冬の寒さは外猫にとって大敵であり、多くの猫が体調を崩し、場合によっては死んでしまう。巣箱があれば、猫は冷たい雨風から逃れることができ、体調を維持しやすい。あるボランティアによると、巣箱があるのとないのとでは、野良猫にかかる医療費が各段に違うという。巣箱はそんなに暖かいのだろうか。猫ではなく、人間のホームレスに聞いた話であるが、段ボールで自分の体格に合わせた棺桶のような箱を作り、その中で寝ていると自分の体温で周りの空気が温まって、下着姿でも十分なくらい暖かいそうだ。その言葉から察すると、猫の巣箱はあまり大きなものではなく、猫が丸くなって丁度くらいの大きさのものが良さそうである。

地域猫や野良猫の適正管理は、猫の数を自然と少なくしていくことが目標の一つであるのだから、冬の寒さで猫が死んでいくのは自然であり、その方が早く猫の数が減っていいのではないかという意見を聞くことがある。しかし、その意見には頷けない。地域猫や適正管理の基本的な考え方のひとつは、避妊去勢手術により一代限りとなった生を全うさせてあげるということであって、凍えて死ねという考え方は、飢えて死ねという考え方とさほど違いがない。

しかし、この巣箱がまた、トラブルの原因となりやすい。道路管理者や公園管理者からすれば、無断で設置された巣箱は不法占用物件であり、撤去の対象だ。撤去しても翌日にはもう新しい巣箱が設置され、設置と撤去が繰り返される。許可を願い出ても、占用物件の設置には細かい規定があり、猫を巣箱の設置をストレートに許可できるような条文は、道路法にも都市公園法にも存在しない。公共の場所での巣箱の設置は、非常にハードルの高い問題だ。

とはいえ、実はその巣箱が公然と設置されている場所がいくつか見受けられる。中には脚のついた立派な木製の巣箱がずらりと並べられているような公園もある。行政が冬季限定で許可証を発行しているような公園もある。どうしてそんなことが認められるのか。それは、ボランティアと行政、地域住民の信頼関係の賜物なのだ。ボランティアが公共性のある活動をきちんとしており、トラブルを起こさないどころか、他のトラブルを未然に防いでくれる。そんな信頼関係があるところでは、誰も猫の巣箱に文句を言わない。いや、正確にはまれに苦情があっても、s私設管理者が取り合わないのである。そこまでの信頼関係を勝ち取るためには、何年もの地道な実績の積み重ねが必要だ。

実は猫の巣箱にも公益に資するところがある。冬場、民家の物置に猫が入り込むなどという苦情があるが、巣箱を設置することによって民家への侵入を抑止することが可能だ。また、猫の病気を蔓延の防止にも役立つし、個体管理にも役立つ。その近辺にトイレを置けば、周囲への糞害防止の効果は高い。問題は、行政や地域が容認するかどうかの問題である。
本当にそんなにうまくいくのか。逆に猫を招きよせて増やしてしまわないのか。公共の場所を私物化して猫を飼っているというだけのことに過ぎなくなるのではないのか。そういうことを言われないための実績と信頼が必要なのである。

地域猫活動の公益性が広く認められる時代が来たら、巣箱の公益性も認められ、たとえ公共の土地であったとしても管理上有益であるという理由で普通に設置が認められる時代がくると考えている。それまでの間は、民間の土地所有者に理解を求めるか、暗黙も含む行政の個別の了解に頼るしかないのが現状である。個別の了解や民間の土地所有者の理解を得るにしても、まずは、信頼される適正な管理を続けていくことしかない。

まっとうはボランティアであれば決してやらないだろうが、時々、古い段ボールの巣箱がボロボロになったまま片づけられることもなく、新しい巣箱が置かれているという現場を見ることがある。さらに、置き餌もされていて、非常に不衛生な状態となっている場所がある。そういう状態を見れば、たとえ猫嫌いでなくとも不快感を覚えるだろう。猫の巣箱の設置にも公益性という考えが必要で、美観、清潔を守ることは最低限必要だ。

* 巣箱については、sakkiさんのブログ「日々是ねこパト」に適正管理の参考となる非常に興味深いレポートがあるのでご紹介します。
 「猫ハウスの効能」 http://ameblo.jp/nekojarashi2828/entry-11420173965.html

(やがて続く日がくる)


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