前回、猫ボラと行政との関係について書いた。すると、「行政を動かすにはどうしたらいいですか?」と質問を受けた。以前にも、ボランティアさんの集まりで同じ質問を受けたことがある。

自分の中には、行政を動かすコツみたいなものが蓄積されているように思うが、一言では言えない。行政を動かすのだって、段階があり、社会情勢があり、タイミングがあり、人の個性がある。何より行政を動かすことは、一朝一夕でできることではない。

また、行政に対する要望や不満を耳にすることが多いが、それなら行政を動かすために、こういう活動をしましょうと提案しても、「忙しい」とか「目立ちたくない」といって具体的な行動につながらないことも多い。それぞれのご事情や行政に対する不信感は理解できるが、行動しなければ何も変わらない。

特に地域猫の活動は、法律で定められた制度ではない。地域によるが、猫ボラにとって当たり前のことが、一般市民や行政にとっては余計なことであったりする。
この点、今年9月の動物愛護管理法の改正によって、目的のところに「人と動物の共生する社会の実現」が追加された。来年9月までに施行の予定で、「共生社会の実現」をめざす猫ボラにとって追い風となるだろう。しかし、あくまで目的規定であって、地域猫を普遍的な活動にするためには、まだまだ努力が必要だ。

「行政を動かす」というのは、市民参加の問題である。市民参加には、

(1) 役所への直接アプローチ(意見表明、要望書等)
(2) 議会へのアプローチ(陳情、請願、議員を通じての発議)
(3) 市民団体活動への参加(NPO法人や任意団体による市民活動)
(4) 地域コミュニティ活動への参加(町会、自治会等による自治活動)

の4つがある。新しい取り組み、それも地域に根差した活動を進めていくためには、これら4つのファクターを連携させ複合的に進めていく必要がある。
一人ではできない。同志を増やすことだ。そして、4つの要素のどこかで、一人ひとりが活動推進の一翼を担ってほしい。

(近日中に続く)


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地域猫活動で、行政の取り組みが不十分であるといわれることが多い。
確かにその通りだ。行政からすれば、人も金も減らされている中、元々法律で決められた仕事でもないのに、これ以上、仕事を増やしたくないというのが本音だろう。
だから勢い、行政に対するボランティアからの非難が集中することがある。

しかし、ひとつ意識しなければならないのは、行政を非難するのは楽だし、ストレスの発散にもなるのだけれど、それだけでは何も変わらないということだ。なのに、一部の猫ボランティアには、自分たちはこれだけのことをしているんだから、行政も一般市民も、自分たちに協力して当たり前だという独善の気配がみられる。

極端な例であるが、ボランティアと行政の会議で「自分たちは自腹で猫の手術代も餌代も出しているのだから、後始末くらいは地域の人がやって当たり前だ」と発言した人がいた。また、「公園でボランティアが里親会をするのに、占用使用料がかかるのはおかしい」と文句をいった人もいた。理想を思い描くことは自由であるが、現実はまだまだ遠い。にも関わらず、そういう「一足飛びに超えてしまう人たち」が、猫ボラ全体の評価を損ねてしまう。

行政にもできることとできないことがある。「行政ができない分を、市民がここまでカバーできる。そうすればここまでのことができる」という現実的なアプローチが必要だし、そのアプローチが成功するためには、真摯な活動と実績にもとづいた、ボランティアと行政との信頼関係が不可欠である。地域猫の取り組みが進んでいる自治体には、必ず、その取り組みを支える優れたボランティアがついている。
ボランティアは圧力団体ではなく、行政のパートナーであり、行政の仕事が楽になるということをわかってもらうことが必要だ。
行政を一切批判してはならないということではない。ボランティアと行政がより良い関係を築くための現実を踏まえた問題提起であるならば批判も必要だ。批判と非難はそこが違う。

数年前のこと、ペット用品を販売しているメーカーの冊子の記事に、大阪・中之島公園の猫ボランティアが紹介されていた。ボランティアの代表が、「行政に対しては非難ではなく提案で協働すること。行政にできること、私たちにできることを持ち寄ればいい」と語っている。この言葉ほど、協働の本質を言い表した言葉は他にない。


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地域猫活動には、発達段階がある。
一覧にすると、こうなる。

【地域猫活動の発達段階】 
 (レベル1) 餌やり       ⇒ 猫に癒される。猫が可哀そう。猫が可愛い。
 (レベル2) TNR        ⇒ 繁殖防止に有効。
 (レベル3) 適正管理     ⇒ 繁殖防止、餌の後始末、周辺清掃
 (レベル4) 外形的地域猫  ⇒ 地域の了解(町会長のハンコ)
 (レベル5) 共生の街づくり  ⇒ 住民自治としての取り組み


レベル2のTNRとは、Trap(捕獲)、Neuter(避妊去勢手術)、Return(元に戻す)ことで、猫の繁殖防止に有効な手段だ。発情しないからサカリの鳴き声もなくなるし、メスを奪い合ってのオス猫同士のケンカもほとんどなくなる。オス猫の場合は、おしっこのにおいが相当に薄くなる。

レベル3の適正管理とは、TNRを施して繁殖を防止しても元の猫はそのままいるので、一代限りとなった猫がトラブルの原因とならないように、時間を決めて餌を与え、糞尿対策や周辺の清掃を行うことである。個人レベルの活動が多いが、いわゆる「餌やり」とは違う。「TNR+適正管理」で、公益性はグンと高くなる。

レベル4は、町会長の同意があれば助成金を出すという制度を行政が行っている場合によくある話で、とりあえず町会長のハンコをもらったけれど、猫の世話はもっぱらボランティアがやっているという場合が多い。外形的地域猫と呼ぶ所以である。

レベル5は、地域住民全体で一代限りとなった猫を見守りながら、猫との共生を図ろうというレベル。ここまできてやっと、本当の地域猫だ。地域猫を提唱した黒沢獣医のいう地域猫とは、こういう共生の街づくりを指しているのではないかと思っている。

ここで注意しなければならないことは、TNRと適正管理、そして次の段階である地域猫は、別物だということだ。近年は、地域猫に関する制度を持っている自治体も増えたが、多くの自治体の制度が、この3つを混同しているのではないかと思う。
自治体の制度の多くは、避妊去勢手術費用を補助するというものだけど、その費用扶助を受けるために町会長の同意書を必要とするところが多くある。

しかし、避妊去勢手術費用の扶助だけであれば、それはTNRの段階の話なので、町会長の同意など関係ない。手術して繁殖を防止するだけのことなのだから(実は捕獲して手術するのが大変なわけではあるけれど)。
実態として、単にTNRのための費用を補助するだけなのに、町会長のハンコがいるというのは、何かのトラブルや苦情が生じたときに、地域の同意を得ていると行政が言い訳をするためにやっていることではないかと疑ってしまう。

環境省のガイドラインでも、「地域住民の合意のもと、それぞれの地域の実情に合わせたルールづくりが必要」と書かれているけれど、それはあくまで、地域猫活動のこと。TNRや適正管理の話ではない。行政は、TNRと適正管理、地域猫の違いをきちんと見定め、それぞれの段階に対応した啓発周知と制度の実施をしてほしい。
最近、yahooのニュースでも話題になった東京都千代田区では、適正管理をよびかけながらも、TNRに特化した補助金制度を実施して成果をあげている。町会長のハンコは不要である。

町会長のハンコが必要な制度を実施している自治体であれば、きちんと街全体で取り組みができるように、行政も粘り強く、共生の街づくりへの働きかけを続けてほしい。地域猫という高次元で理想的な活動を求めるなら、行政にも相当な覚悟が必要だ。
ハンコがあれば助成します、というだけではあまりにも安易であり、無駄な労力を費やすだけだ。

(いつか続く)


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